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派遣社員が扶養内で働くための条件、メリット・デメリット、注意点を徹底解説
公開日:2025.04.29
更新日:2025.05.01
「派遣社員として働きたいけれど、税金や社会保険料の負担はなるべく抑えたい」
このような思いから、「扶養内で働く」という選択肢を考えている方も多いのではないでしょうか。
扶養には税制上と社会保険上の違いがあり、「103万円の壁」「130万円の壁」など収入に関する条件もさまざまで、少し複雑に感じるかもしれません。本記事では、扶養内で働くために知っておきたい基本知識から具体的な条件、メリット・デメリット、手続きの方法などを解説します。
目次
派遣社員が扶養内で働くための条件とは?
扶養に入るためにはいくつかの条件を満たす必要があります。ここでは主な3つの条件について解説します。
| 年収を130万円未満に抑える
社会保険の扶養に入るための最も重要な条件の一つが収入要件です。年間収入の見込みが130万円未満でなければなりません。これがいわゆる「130万円の壁」です。
ただし、60歳以上の方や障害年金を受けられる程度の障がいを持つ方の場合は、基準が緩和され180万円未満です。また、被扶養者の収入が、扶養してくれる方の収入の半分未満であることも条件となる場合があります。
年収が130万円以上になると、原則として自身で国民健康保険・国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入する必要が生じ、保険料負担が発生します。
| 3親等以内の親族の扶養に入っている
扶養に入れる親族の範囲は、原則として3親等以内の親族に限られます。具体的には、配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹、孫などが該当します。
配偶者は常に扶養の対象となりますが、配偶者以外の親族を扶養に入れる場合は、同居していることが条件です。
| 国内に居住している
2020年4月の法改正により、社会保険の被扶養者になるための要件として、原則「日本国内に住所を有していること」が追加されました。日本の公的な医療保険制度は、国内居住者を対象としているためです。海外に居住している方は、原則として日本の健康保険の被扶養者になることはできません。
ただし、海外留学をする学生や海外に赴任する家族に同行する場合など、日本に生活の基盤があると認められる特定の例外では、海外に居住していても被扶養者として認定されることがあります。
扶養とは?
「扶養」とは、主に経済的に自立していない親族などを援助することを意味しますが、制度としては「税制上」と「社会保険上」の2種類があります。
ここでは、それぞれの扶養制度について解説します。
| 税制上の扶養
税制上の扶養とは、所得税や住民税の計算において、納税者に扶養している親族がいる場合に、税負担が軽減される制度のことです。
納税者は自身の所得から一定額を差し引くことができ、課税対象となる所得が減るため、結果的に納める税金が少なくなります。
具体的には、生計を一にする配偶者以外の親族で、年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)などの要件を満たす場合、「扶養控除」が適用されます(16歳以上)。配偶者の場合は、同様の所得要件などを満たせば「配偶者控除」が適用されます。
さらに、配偶者の所得が48万円を超えて配偶者控除が受けられなくても、所得が133万円以下(給与収入のみなら約201万円以下)であれば、所得に応じて段階的に控除が受けられる「配偶者特別控除」という制度もあります。
| 社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、扶養者に生計を維持されている家族が、自身で保険料を負担せず、医療保険や年金制度の保障を受けられる仕組みのことです。
被扶養者になると、自身の健康保険料や国民年金保険料の支払いが免除されます。健康保険については、保険証が交付され、病気や怪我をした際には扶養者と同様の自己負担割合で医療サービスを受けることができます。
社会保険の扶養に入るためには、主に次のような条件を満たす必要があります。
・主に扶養者によって生計が維持されていること
・年間の収入見込みが130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であること、かつ被扶養者の収入が扶養者の収入の原則として半分未満であること
・扶養者の3親等内の親族であること、日本国内に居住していること
税制上の扶養とは、収入の基準などが異なる点に注意が必要です。
派遣社員が扶養内で働くメリット・デメリット
派遣社員が扶養内で働くことには、メリット・デメリットがあります。ここではそれぞれを詳しく解説します。
| 派遣社員が扶養内で働くメリット
メリットとしては、以下の点が挙げられます。
・税負担が軽減する
・勤務時間が少ないので負担が少なく働ける
・国民年金保険の第3号被保険者になれる
まず、税制上の扶養に入ることで、扶養者が配偶者控除や扶養控除を受けられるため、世帯全体で見た所得税や住民税の負担を軽減できます。
また、労働時間を調整する必要があるため、結果的に勤務時間が短くなり、体力的な負担が少なく、家事や育児、プライベートな時間との両立がしやすくなります。
さらに、社会保険の扶養に入ると、国民年金の「第3号被保険者」となり、自身で国民年金保険料を納めなくても納付期間として扱われます。将来、老齢基礎年金を受け取る資格を得られる点は大きなメリットと言えるでしょう。
| 派遣社員が扶養内で働くデメリット
主なデメリットとしては、以下の点が考えられます。
・厚生年金の受給が対象外になる
・傷病手当金や出産手当金の対象外になる
・収入を抑える必要がある
社会保険の扶養に入っている場合、自身では厚生年金に加入しないため、将来受け取れる年金は老齢基礎年金のみとなり、厚生年金に加入している人と比べて年金額は少なくなります。
また、自身が会社の健康保険に加入していないため、「傷病手当金」や「出産手当金」といった給付金を受け取ることができません。
そして最も大きな点は、扶養の範囲内に収めるために、意図的に労働時間や収入を調整する必要があることです。「もっと働きたい」「収入を増やしたい」と思っても、扶養の壁を意識してセーブせざるを得ない場合があります。
派遣社員が扶養内で働く方法
派遣社員として扶養の範囲内で働くことを希望する場合、年収などの条件を満たす必要があります。
ここでは、扶養内で働くために具体的に取るべき行動や注意点について解説します。
| 年収ベースで収入を計算する
扶養内で働くためには、まず自身の年収見込みを正確に把握することが重要です。時給だけでなく、想定される労働時間や日数をもとに、年間の収入が扶養の上限額を超えないか計算してみましょう。
注意点は、基本給だけでなく各種手当も年収に含まれる場合があることです。例えば、家族手当や住宅手当などは収入とみなされます。
通勤手当の扱いについては、税法上・社会保険上で異なる場合があるため、派遣会社に確認が必要です。給与明細をしっかり確認し、収入を正確に把握・管理しましょう。
| 配偶者と事前に相談しておく
扶養内で働くかどうかは、ご自身の働き方だけでなく、世帯全体の収入や税金、社会保険にも影響します。そのため、配偶者がいる場合は、事前にしっかりと相談しておくことが不可欠です。
扶養内で働くことのメリットとデメリットを共有し、ご自身の希望だけでなく、家計全体の状況や将来設計を踏まえて、家族にとって最適な働き方を話し合いましょう。配偶者の会社に家族手当がある場合、支給要件なども確認しておくとよいでしょう。
| 派遣会社に扶養内で働きたい旨を伝える
派遣会社に登録する際や仕事を紹介してもらう際には、担当者に「扶養内で働きたい」という希望を明確に伝えましょう。事前に伝えておくことで、担当者は年間の収入が扶養の範囲内に収まるような勤務時間や日数の求人を探してくれたり、条件に合う仕事を紹介してくれたりします。
また、就業先企業にもその旨が伝わることで、働き始めてからのシフト調整などがスムーズに進む可能性が高まります。ただし、派遣会社に任せきりにするのではなく、紹介された仕事の契約内容は自身でもしっかりと確認し、年収がオーバーしないように注意しましょう。
派遣社員が扶養に入る流れ
派遣社員として働き、配偶者などの扶養に入ることが決まったら、次に具体的な手続きを進める必要があります。
主に社会保険の扶養に入る手続きは、扶養者となる方の勤務先を通じて行います。ここでは、一般的な流れを解説します。
| 実際の契約内容を確認する
最初に、派遣会社との間で結ばれる雇用契約の内容を改めてしっかりと確認しましょう。特に、時給、1日の所定労働時間、週の勤務日数、契約期間などを確認し、それに基づいて年間の収入見込み額を計算します。
見込み額が、社会保険の扶養の条件である年収130万円未満に収まっているかを最終チェックします。もし収入が上限を超えそうな場合は、扶養に入ることができないため、契約内容の調整が可能か派遣会社に相談しましょう。
| 必要書類を準備する
次に、扶養に入るための申請に必要な書類を準備します。必要書類は、扶養者が加入している健康保険組合によって異なる場合があるため、必ず事前に扶養者の勤務先に確認しましょう。一般的には、扶養者が勤務先から「健康保険被扶養者(異動)届」を入手し、必要事項を記入します。
加えて、被扶養者の収入を証明するための書類を求められることが多いです。税制上の扶養に入る場合は、扶養者が年末調整の際に「扶養控除等(異動)申告書」に情報を記載し提出します。
| 書類を提出する
必要な書類がすべて揃ったら、扶養者が自身の勤務先の担当部署へ提出します。被扶養者が直接、健康保険組合などに書類を送るわけではありません。書類を受け取った勤務先の担当部署が、内容を確認し、健康保険組合への申請手続きを進めてくれます。
書類に不備がなく、審査で認定されれば、後日、健康保険証が交付されます。これで社会保険の扶養手続きは完了です。
派遣社員が扶養内で働く際の注意点
派遣社員として扶養内で働くことには、いくつか注意すべき点もあります。ここでは安心して働くために、事前に知っておきたい注意点を解説します。
| 残業があるかを確認しておく
契約時の時給や勤務時間から算出した収入が扶養の範囲内であっても、日常的に残業が多い職場では、気づかないうちに収入が上限を超えてしまう可能性があります。お仕事探しの際には、残業の有無や頻度について事前に確認しておきましょう。
また、働き始めてからも毎月の給与明細をチェックし、収入状況を把握することが大切です。もし収入が超過しそうな場合は、年末に慌てて調整するのではなく、早めに派遣会社に相談し、シフトを調整してもらうなどの対策をとりましょう。
| 扶養だけでなく世帯年収を考える
扶養内で働くかどうかを判断する際は、ご自身の税金や社会保険料の負担だけでなく、世帯全体の収入がどうなるかという視点を持つことが大切です。扶養内に収入を抑えることで、目先の税金や社会保険料の負担は軽くなりますが、働ける時間が制限されます。
扶養を外れて働く場合、ご自身の負担は増えますが、世帯全体の手取り額は結果的に多くなることもあります。短期的なメリット・デメリットだけでなく、将来のライフプランや教育費なども考慮に入れ、ご家族にとって最適な働き方を総合的に判断しましょう。
| 年収の壁を理解しておく
「年収の壁」と呼ばれる収入のラインを理解しておくことも重要です。年収の壁を超えると、税金や社会保険料の負担が変化します。主な壁として、次のようなものがあります。
・住民税がかかり始める100万円
・所得税がかかり始め、配偶者控除(満額)などの対象外となる103万円
・一定条件下で社会保険への加入義務が生じる106万円
・社会保険の扶養から外れる130万円など
配偶者特別控除に関わる150万円や201万円の壁も存在します。これらの壁を意識したうえで、働き方を検討することが大切です。
派遣社員が扶養内で働く際によくある質問
ここでは、扶養内で働く際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。疑問点を解消し、安心して仕事探しや手続きを進めるための参考にしてください。
| 扶養内で働くための派遣会社の選び方は?
まず、扶養内勤務に対応できる求人を豊富に扱っているかを確認しましょう。選択肢が多いほど、希望条件に合う仕事が見つかりやすくなります。
就業後も収入管理やシフト調整について相談できるかどうかも大切です。口コミサイトや紹介実績などを参考に、信頼できる会社か見極めましょう。もし派遣会社とのコミュニケーションに不安を感じる場合は、担当者の変更を申し出ることも可能です。
| 扶養から外れる場合に必要な手続きは?
扶養者が自身の勤務先の担当部署に、扶養から外れる旨を連絡します。その後、扶養者の勤務先を通じて「健康保険被扶養者(異動)届」などの必要書類を提出し、被扶養者資格の削除手続きを行います。
今まで使っていた健康保険証は返却します。扶養から外れた後は、ご自身の状況に応じて、新しい勤務先で社会保険に加入するか、お住まいの市区町村役場で国民健康保険と国民年金の加入手続きを行う必要があります。
| 扶養内で働いたら確定申告は必要ない?
扶養内で働いていても、必ずしも確定申告が不要とは限りません。派遣会社が1社のみで、年末調整をしてもらっている場合は、基本的にご自身で確定申告を行う必要はありません。
しかし、複数の派遣会社から給与を得ている場合や、派遣の給与以外に副業などで年間20万円を超える所得がある場合などは、確定申告が必要になることがあります。また、医療費控除やふるさと納税の適用を受けたい場合も確定申告が必要です。
派遣社員が扶養内で働く場合はワポティに相談を
扶養内で働くことは、税金や社会保険料の負担を抑えられるといったメリットがある一方、収入の壁や将来受け取る年金額など、考慮すべき点も多くあります。大切なのは、扶養制度を正しく理解し、ご自身のライフプランやご家族とよく相談した上で、計画的に働き方を考えることです。
扶養内でのお仕事探しや、働き方に関するお悩みは、ワポティにご相談ください。ワポティでは、「扶養内で働きたい」というご希望に沿った求人を多数ご紹介しています。経験豊富な担当者が安心して働けるよう丁寧にサポートします。
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